先日の日本経済新聞で、「85歳世帯の半分で金融資産枯渇、2050年」(2018年4月17日朝刊)という記事がありました。2050年の私の年齢を考えると・・・85歳には至らないまでも、まあ、他人事ではありません。

長寿社会は現実のものとなってきており、公的年金の財政悪化から、厚生労働省や企業では、高齢者の働き方に合わせた年金改革に着手し始めています。

そこで、最近、個人の老後の資産形成手段として推進されているのが「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。5月に制度改正もあることから、今回はiDeCoについてご紹介します。

年金制度の概要

iDecoの詳細に入る前に、まずは日本の年金制度の概要です。

日本の年金制度は3階建てと言われています。

  • 1階部分 … 国民年金(基礎年金)
  • 2階部分 … 厚生年金保険、国民年金基金
  • 3階部分 … 確定給付企業年金、厚生年金基金、確定拠出年金

iDeCoは、3階部分の確定拠出年金の一つです。

確定拠出年金とは

確定拠出年金とは、あらかじめ決まった掛金を支払い、その掛金を元手に加入者自身が預貯金、投資信託等で運用し、掛金と運用収益の合計額をもとに年金給付額が決定される年金制度です。運用成果により年金受給額が変動する点が最大の特徴です。

確定拠出年金には「企業型」と「個人型」の2種類があります。このうち「個人型」の確定拠出年金が「iDeCo」です。

ちなみに、「iDeCo」は、個人型確定拠出年金の英語表記である「indivisual-type defined contribution pension plan」から取った愛称だそうです。

「企業型」は、勤務先の企業が確定拠出年金制度を持っている場合に、その企業に勤務する従業員が加入することができます。企業が掛金を支払い、運用は従業員が行います。

「個人型」は、個人であれば誰にでも加入資格があり、加入者自身が掛金の支払いと運用を行います。加入者の他の年金制度への加入状況により、掛金の拠出限度額が変わります。

「個人型」の掛金の拠出限度額は以下のとおりです。

加入者の種類拠出限度額(月額)
自営業者等(第1号被保険者:国民年金加入者本人)(*1)
68,000円
会社員等(第2号被保険者:厚生年金、共済加入者本人)
勤務先に企業年金がない場合(公務員除く)
23,000円
勤務先で企業型確定拠出年金のみに加入している場合(*2)
20,000円
勤務先で厚生年金基金または確定給付型企業年金に加入している場合
12,000円
公務員
12,000円
専業主婦(夫)(第3号被保険者:国民年金・厚生年金・共済加入者の配偶者)
23,000円

(*1)国民年金基金の限度額と枠を共有

(*2)加入している企業年金規約で個人型への加入を認めている場合のみ

iDeCoへの加入

iDeCoに加入する場合、iDeCoを取り扱う金融機関を1社だけ選び、加入を申し込みます。金融機関により、取り扱う運用商品、サービス内容、手数料などが異なります。

60歳から受給する場合は10年間の加入期間が必要であり、長期にわたる運用となります。ご自身が拠出できる金額、加入期間、運用目標などを検討し、運用商品を選択することになります。

扱われている運用商品は、定期預金と投資信託がほとんどです。
投資信託は、国内の株式・債券、海外の株式・債券が投資対象で、金融機関によってはREITを扱っているところもあります。

投資信託には、「パッシブ」(市場全体の平均的な収益を獲得することを目的とするもの)と「アクティブ」(市場の平均的な収益率を上回る運用成果をあげようとするもの)のタイプがあります。

証券会社のWebサイトには、おすすめ商品診断ができるところもあります。
(ちなみに私は、安定志向で国内債券メインの投資がおすすめとのことでした。・・・当たっていると思います。)

iDeCoのメリット・デメリット

iDeCoのメリット・デメリットをまとめました。

メリットデメリット
掛金が全額所得控除されます運用実績により年金総額が変動します
制度内での運用益が非課税となります60歳まで運用中の資産を引き出せません
受給時に所得控除を受けられます口座開設手数料、維持手数料がかかります

メリット① 掛金の所得控除

iDeCoの掛金は、全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、課税所得から差し引かれます。自営業者の方は確定申告、会社員の方は年末調整にて手続できます。

例えば、平成28年分の給与所得者の平均給与は422万円(注1)だそうですが、この年収で、勤務先に企業年金なし、毎月23,000円積み立て、独身、社会保険料額年額60万円と仮定し、平成30年分の計算で税額(所得税+住民税)を比較してみます。

iDeCoなし → 約28万円

iDeCoあり → 約24万円

掛金のみで、年額約4万円の節税効果です。

メリット② 運用益の非課税

通常、金融商品の運用益は課税(20.315%)対象となりますが、確定拠出年金で運用する商品の運用益については非課税とされています。

メリット③ 受給時の所得控除

受給年齢に到達して年金を受け取る際、一時金で受給する場合は「退職所得控除」、年金で受給する場合は「公的年金等控除」の対象となり、所得税の計算上優遇措置があります。

デメリット① 年金総額の変動

iDeCoでは掛金を預貯金、投資信託等で運用します。預貯金は元本保証ですが、低金利ですので資産形成には限界があります。そこで投資信託等で運用するとなると、元本を下回る可能性があります。

デメリット② 原則途中解約不可

老後の資産形成を趣旨とする制度のため、原則として60歳まで引き出すことができません。

デメリット③ 手数料

①開設時の手数料(2,777円)と、②加入期間中毎月発生する手数料(月額167円~)があります(いずれも記事作成時点の料金)。

②については金融機関によって異なります。また、投資信託で運用する場合、信託報酬が別途かかる場合があります。

最近の制度改正

掛金の年単位拠出

従来、掛金の支払いは毎月の取扱いのみでしたが、平成30年1月から、事前の登録を行うことにより、年単位(1月~12月)でまとめて支払うことが可能になりました。

中小事業主掛金納付制度

こちらは、加入者個人ではなく、中小企業の事業主向けの制度です。

従来、「個人型」の掛金は加入者本人が支払う取扱いのみでしたが、平成30年5月から、従業員100名以下、企業年金を実施していない等の一定の要件を満たしている中小企業に勤務する従業員がiDeCoに加入している場合、当該従業員の限度額の範囲内で、企業が掛金を上乗せすることが可能となりました。

中小企業は自前で企業年金制度を持つことが難しく、従業員の老後の所得確保が懸念されるところですが、iDeCoに加入している従業員に掛金を追加することにより、企業年金制度を持つことなく従業員の資産形成を支援できるようにする、という趣旨です。

追加する掛金は給与所得扱いにはならず、全額法人税法上の損金となります。

簡易型企業型年金の創設

こちらも、中小企業の事業主向けの制度です。

平成30年5月から、設立手続を緩和するとともに制度運営の負担を減らすなど簡素化した、中小企業向けの企業型年金が創設されます。

ただし、企業型年金を持つとなると、地方厚生局への事業報告や従業員への説明・教育なども必要となりますので、現実的にはなかなか難しいのではないかと思います。

まとめ

iDeCoの加入者が伸びない理由は、自分で投資運用するなんてわからない・こわい・面倒くさい検討する時間がない、というところにあるのだろうと思います。

制度改革も進められていますが、今一つ、ニーズとはずれているようにも思えます。銀行での窓販解禁も検討されるようですが、会社員の方は、銀行窓口が開いている時間に銀行へはなかなか行けないですしね。

とはいえ、公的年金の受給年齢は徐々に引き上げられており、受給できるとしても老後にかかる医療費などを考えると不安な金額。

もし投資での資産形成を考えるなら、単独で金融商品を購入するよりは、iDeCoやつみたてNISA(注2)を利用する方がメリットはあると思います。

結局、健康に気をつけて長く働くのが一番なんでしょうか・・・。


(注1)「平成28年分民間給与実態統計調査結果」(国税庁)より

(注2)非課税投資枠が年間40万円、投資期間が20年の新たな少額投資非課税制度