新年度の開始を機に、税務・会計に関する記事を少しずつ掲載していきたいと思います。

第1回目の今回は、「申告納税制度」についてです。私の職業は税理士であり、その存在意義にかかわる制度ですので、初回のテーマに選んでみました。

なぜ自分で税金を計算するの?

会社や個人の方は、1年間の収入・経費を自ら記録・集計し、それに基づき法人税や所得税を計算し、税務署等に申告し、納税しなけれなばなりません。
このホームページをご覧の方であればご存じかもしれませんが、収支の集計から税額の算出に至る過程で税務調整や所得控除などの計算を行う必要があり、それなりに複雑で、時間も手間も(税理士に依頼すればお金も)かかる作業です。

他方、土地や建物をお持ちの方は「固定資産税」という税金を納めます。しかし、固定資産税の計算や申告はご自身でなさったことはなく、都税事務所等から納付書が届き、記載金額どおりにお支払いをしておられると思います。

なぜ、法人税や所得税は、自分の税金を自分で計算し申告・納税する必要があるのでしょうか?
それは、法人税や所得税が、「申告納税制度」に依拠しているからです。

申告納税方式と賦課課税方式

納税義務の確定手続には大きく分けて2種類あります。一つは「申告納税方式」、もう一つは「賦課課税方式」です。

申告納税方式とは、納税額は納税者の納税申告によって確定することを原則とし、申告がない場合や申告内容が法律に違反する場合等に限って、国や地方公共団体が決定し確定する方式をいいます。
上述の法人税、(申告)所得税のほか、国税では相続税、贈与税、消費税、酒税、印紙税など、地方税では法人県民税、法人市民税などがあります。

賦課課税方式とは、納税額を国や地方公共団体が計算し確定する方式で、国税では加算税、延滞税、地方税では固定資産税、不動産取得税、自動車税、個人住民税などがあります。

第二次世界大戦前の日本では、法人税や所得税についても賦課課税方式が採用されていましたが、第二次世界大戦後、連合国司令部の勧告により、申告納税制度が導入されました。

当時のアメリカではすでに申告納税制度が採用されていたためそれが強力に推進されたという要因もあるようですが、納税者自らが税法を正しく理解し、法に則って正しい申告・納税をするという点で、申告納税制度は戦後の民主主義政策に合致した民主的な制度であるといえるでしょう。

導入当初は、戦後経済の混乱、制度の認知不足等でかなりの困難があったようですが、申告納税制度を支える各種制度が整備され、徐々に定着し、現在に至っています。

申告納税制度を支える制度

申告納税制度を支える制度には次のようなものがあります。

・青色申告制度
申告納税制度が適正に機能するためには、納税者の継続的かつ正確な記帳が根拠として必要となります。このため、事業を行う個人または法人が、あらかじめ承認を受けて青色申告を行うことができるとし、帳簿の継続的な記帳書類の保存義務を課せられる一方、税制上の優遇措置が設けられています。

・加算税制度
申告を行わなかったり、不正な申告を行った場合にはペナルティが課されます。

・税務調査
申告納税制度では、納税者の申告により納税義務が確定するため、申告内容が正しいかどうかをチェックするための制度がなければ、不正な申告を行うものが必ず現れるでしょう。真正に申告する者と不正に申告する者との間で不公平も生じます。このチェック制度の一つが税務調査です。

・不服申立制度
税務署長等が行った課税処分等に不服がある場合に、納税者は、再調査の請求審査請求を行うことができます。

青色申告制度はいわば「アメ」、加算税制度はいわば「ムチ」、チェック機能として「税務調査」制度を置きつつも、あくまで納税者の主体性を尊重して「不服申立制度」が設けられている、というところでしょうか。

申告納税制度をプラスに受け止めよう!

私は、税理士登録をすると受講しなければならない登録時研修の中で、「申告納税制度は民主的な制度である」と教えられ、「なるほど!」と思い、申告納税に対する見方がそれまでとはがらりと変わったのですが、一個人事業主の立場からすれば、「計算が大変」「税制難しすぎ」「こっちに計算させて、お役所が楽してるのでは?(関係各所の皆様、すみません・・・)」など、どうしても負担感が先に立ちます。

しかし、自分の所得のことを一番よく知っているのは自分自身です。“納税者自らが税法を正しく理解”できれば、自分に適用できる税額控除や所得控除が見つかり、結果的に節税できることもあるでしょう。国や地方公共団体が税額を決定するのでは、個々の事情を把握するには限界があり、最小の税額にはならないかもしれません。

税理士は、税制と納税者の間に入り、“双方を正しく理解”することにより、正確かつ最小の税額を計算・申告するのがまず第一。そのうえで、その過程で得た理解を経営改善やライフプランの設計にも役立てることで、時間をお金で買う以上の価値を提供できる者だと思います。

申告納税制度は、面倒だけれどもメリットもある制度、と受け止め、税理士に相談することによって、そのメリット+αを実感していただけたらいいなと思います。